神に問う。信頼は罪なりや。
太宰治人間失格」(1948)
切なさ人を信じることに疲れたとき
物の真に肝要なところはただ虚にのみ存すると彼は主張した。たとえば室の本質は、屋根と壁に囲まれた空虚なところに見いだすことができるのであって、屋根や壁そのものにはない。
岡倉天心茶の本」(1906)
知的好奇心ものの本質を考えたいとき
隣の広間の床に据(す)えてある置時計が次の刻(とき)を打つまでには、きっと悟って見せる。悟った上で、今夜また入室(にゅうしつ)する。そうして和尚の首と悟りと引替(ひきかえ)にしてやる。
夏目漱石夢十夜」(1908)
決意侮辱を受けた直後、絶望的な状況で覚悟を決めるとき
「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら。」
新美南吉手袋を買いに」(1943)
問いかけ、余韻信じたいけど信じきれないとき
平常から、犯罪だ探偵だと、議論丈は却々一人前にやってのける私だが、さて実際に打っつかったのは初めてだ。手のつけ様がない。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
無力感、現実への直面理想と現実のギャップに気づいたとき
婀娜っぽい、かろらかな微笑の裏に、真摯な熱い涙のほのかな痕跡を見詰めたときに、はじめて「いき」の真相を把握し得たのである。
九鬼周造「いき」の構造」(1930)
切なさ人の奥深さに触れたとき
箱根あたりの、何から何まで行き届いた西洋人に向く宿屋よりも、こんなのがかえって気に入りました。
小泉節子思い出の記」(1908)
驚き、共感不気味で粗末な山中の宿に泊まったとき
お前はもう仙人になりたいとは思わないか。――ではまたどこかの街角で夕日の沈む空を眺めながら、腹を空かしているのか。
芥川龍之介杜子春」(1920)
問いかけ、温かさこれからどう生きるか問われたとき
永久の未完成これ完成である
宮沢賢治農民芸術概論綱要」(1926)
希望完璧を求めて苦しくなったとき
秋の半ば、十月の末から此の雑木林の変化は見事である。
国木田独歩武蔵野」(1898)
感動季節の変わり目に自然の美しさを感じたとき
私は妻には何にも知らせたくないのです。妻が己れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存しておいてやりたいのが私の唯一の希望なのですから
夏目漱石こころ」(1914)
切なさ愛する者を傷つけたくないと思ったとき、また自分の秘密を抱えて孤独を感じるとき
雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
宮沢賢治雨ニモマケズ」(0)
決意困難に直面したとき、逆境に負けたくないとき
けれども、かつて銭(ぜに)を出して水菓子を買った事がない。ただでは無論食わない。色ばかり賞(ほ)めている。
夏目漱石夢十夜」(1908)
諷刺, 違和感, 人間性への問い現実とのギャップに気づき、人間の矛盾した本質を見つめたいとき
庄兵衛はいつも遠島を申し渡された罪人を載せて、大阪へ廻してやる事になっていたのであるが、今迄載せて来た罪人は、いずれも暗い顔をしていた。それに引きかえて喜助の顔は如何にも楽しそうで、若しかすると嬉しいのではなかろうかと思われた。
森鷗外高瀬舟」(1916)
違和感、好奇心常識では理解できない人の態度に出会ったとき
徒手空拳(としゅくうけん)、南洋の島へおしわたって、今日(こんにち)の成功をおさめたほどの快男児ですから、この人さえ帰ってくれたら、家内のものは、どんなに心じょうぶだかしれません。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
希望危機的状況にありながら、心の支えを求めるとき
小さき者よ。不幸なそして同時に幸福な汝等の父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。
有島武郎小さき者へ」(1918)
祝福旅立ちを見送るとき
孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのでなく、大勢の人間の「間」にあるのである
三木清人生論ノート」(1941)
孤独人混みの中でこそ孤独を感じるとき
疑い、理解し、肯定し、否定し、欲し、欲せぬ、なおまた想像し、感覚するものである。
デカルト省察」(1641)
思考の豊かさ人間の心の複雑さに向き合いたいとき
苦しんだり、怒ったり、騒いだり、泣いたりは人の世につきものだ。余も三十年の間それを仕通して、飽々した。
夏目漱石草枕」(1906)
疲弊、諦観、決別人生に疲れ果てたとき、同じ苦しみの繰り返しから逃げたいとき
自分一人でさえ断れそうな、この細い蜘蛛の糸が、どうしてあれだけの人数の重みに堪える事が出来ましょう。
芥川龍之介蜘蛛の糸」(1918)
恐怖自分の救いが危機に瀕しているのを知ったとき