八月の野分の夜、六条院では激しい風が吹き荒れている。源氏の息子である夕霧中将は、祖母の三条宮を見舞った帰り道、父を訪ねて六条院へ立ち寄る。風で格子や屏風が開け放たれた隙に、中将は偶然にも継母である紫の上の美しい姿を垣間見てしまう。その瞬間、中将は言葉に尽くせぬ美貌に心を奪われる。
源氏が現れ、中将と会話を交わすが、その後も中将は紫の上への想いを抑えることができない。翌朝、風の被害を見回りながらも、中将の心は昨夜見た継母の面影で満たされている。源氏もまた、息子の様子から何かを察知し、紫の上に「昨日の風の紛れに中将はあなたを見たのではないか」と問いかける。
この物語は、野分という自然の力によって偶然生まれた禁断の恋心を描いている。身分と道徳に縛られた平安時代において、継母への恋という許されぬ感情に苦悩する若い貴公子の心理が、嵐の夜の幻想的な美しさとともに繊細に描かれた名篇である。