九月初旬の蒸し暑い夜、「私」はD坂のカフェ「白梅軒」で冷たいコーヒーを飲みながら、向かいの古本屋を眺めていた。そこは知り合いの明智小五郎の幼馴染みが女房をしている店だった。しかし奇妙なことに、いつも店番をしているはずの美しい女房の姿が見えず、奥との境の障子の格子戸も閉ざされていた。
そこへ明智小五郎がやって来て、私と同じように古本屋を注視し始める。二人で見ていると、短時間に四人もの客が本を漁っているのに、店の人間は一切姿を現さない。不審に思った二人は古本屋へ向かい、声をかけても返事がないため奥の部屋を覗くと、電灯を点けた瞬間、女房が首を絞められて死んでいるのを発見する。
明智が警察に通報し、司法主任や警察医が到着して検分が始まる。死因は絞殺で、死後一時間程度と判明。主人は毎晩古本の夜店に出ており不在だった。やがて裁判所の人々や署長、名探偵として名高い小林刑事らが現場に駆けつけ、本格的な捜査が開始される。江戸川乱歩初期の代表的な本格推理小説の幕開けである。