主人公「僕」は友人の結婚披露宴に出席するため、避暑地から東京へ向かう途中、不吉な予兆に次々と遭遇する。汽車で偶然出会った理髪店主人から昼間でもレインコートを着た幽霊が出るという話を聞いた直後、駅でまさにレインコート姿の男を目撃する。さらに電車内でも同様の男が現れ、主人公は次第に不安を募らせていく。
ホテルに到着後、主人公は視野に半透明の歯車が回転する幻覚に悩まされる。これは彼が以前から経験している症状で、やがて激しい頭痛へと発展する。披露宴では隣席の漢学者と古典について議論するが、破壊的な発言で相手を怒らせてしまう。料理に蛆を発見し、さらに憂鬱感が深まる。
宴会後、部屋で執筆しようとするが手が震えて同じ英語「All right」しか書けない。その時、姉の娘から緊急の電話がかかってくる。姉の夫が田舎で轢死したという知らせだった。しかも彼は季節外れのレインコートを着ていた。主人公は運命の暗示を理解し、一連の不吉な予兆が現実となったことに戦慄する。
芥川の晩年の傑作として、主人公の精神的破綻と死への予感が幻覚的な描写で描かれた自伝的色彩の強い作品。