高野聖
泉鏡花1900年)
小説9337,207怪奇・幻想
あらすじ — 山奥で出会った妖しい美女と、僧侶の運命
飛騨から信州へ向かう険しい山道で、高野聖の宗朝が道に迷い、一軒の山小屋に辿り着く。そこには美しい女と白痴の夫が住んでいた。女は旅人を親切にもてなすが、その美貌と妖艶な魅力は異常なほどで、宗朝の心を激しく動揺させる。 女の家の周囲では不可思議な現象が次々と起こる。猿や蛭、蛇などの動物が人間のような姿で現れ、女の魔力によって変身させられた旅人たちの成れの果てであることが暗示される。宗朝も女の美しさに魅入られ、破戒の誘惑に苛まれながら、危うく畜生道に堕ちそうになる。 しかし持参していた剃刀で自らの肌を傷つけ、激しい痛みによって正気を取り戻した宗朝は、必死に山小屋から逃げ出す。追いかけてくる女の声を振り切り、ようやく人里に辿り着いて九死に一生を得る。 鏡花特有の幻想的で妖艶な文体で描かれた、仏教的な救済と堕落のテーマを扱った傑作怪奇譚である。現実と幻想の境界が曖昧な山中を舞台に、人間の欲望と信仰の相克を鮮烈に描き出し、読者を魔性の世界へ誘う魅惑的な物語となっている。
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