彼女ハコレマデ決シテ必要以外ノ部分ヲ見タリ触レタリシタコトガナカッタノダ。
谷崎潤一郎」(1956)
二年の後には、激しく往復する踏み木が睫毛(まつげ)をかすめても、絶えて瞬くことがなくなった。
中島敦名人伝」(1942)
何というやさしい、何という美しい、何というおっとりした声なんでしょう
新美南吉でんでんむしのかなしみ」(1935)
私は、お前方から指一本指される身じゃあない。
宮本百合子貧しき人々の群」(1916)
その水晶の笛のような声に、嘉十は目をつぶって震え上がりました。
宮沢賢治やまなし」(1923)
私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいもののために走っているのだ。
太宰治走れメロス」(1940)
道徳の根本概念は我と物でなく、我と汝である。
三木清哲学入門」(1940)
不可解な、下等な、退屈な人生の象徴でなくて何であろう。
芥川龍之介蜜柑」(1919)
鹿の黄色な横っ腹なんぞに、二三発お見舞いしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。
宮沢賢治注文の多い料理店」(1924)
自分の中にある偉大なものの小ささを感じることのできない人は、他人の中にある小さなものの偉大さを見逃しがちである。
岡倉天心茶の本」(1906)
内供はなまじっか鼻が短くなったのが、かえって恨めしくなった。
芥川龍之介」(1916)
人間が変わったのではない。人間は元来そういうものであり、変わったのは世相の上皮だけのことだ。
坂口安吾堕落論」(1947)
僕たちに父親てておやがあるわけはない。そんなものがあるもんか。
菊池寛父帰る」(1917)