谷崎潤一郎1956年)
小説176105,313恋愛狂気
あらすじ — 夫婦の秘密と欲望
昭和31年(1956年)に発表された谷崎潤一郎の長編小説。五十代の大学教授である夫と、四十代の妻・郁子が、互いの日記を「盗み読みされること」を前提に書き続ける、という奇妙な形式で物語は進行する。 夫はカタカナで、妻はひらがなで日記を綴る。夫は衰えた性的体力と、京都の旧家に育った妻の病的なまでの性欲との落差に苦しみ、若い弟子の木村を嫉妬の刺激剤として意図的に家に引き入れる。妻は表向き「女の身嗜み」を固守しながら、木村への想いを募らせていく。やがて夫は妻を悪酔いさせて気を失わせ、その裸体を初めて克明に見つめ、ポラロイドで撮影しはじめる。嫉妬、窃視、黙認、共犯——夫婦と木村、そして娘の敏子を含めた四人の関係は、互いの日記を互いに読み合う「書くことと読まれること」の螺旋のなかで、破滅に向かって加速していく。 相手に読まれると知りながら書かれた日記は、果たして真実なのか、それとも相手を操るための虚構なのか。老年の性、嫉妬、夫婦という制度そのものへの問いを、交互に反転するカタカナとひらがなの文体で描き切った、谷崎文学の極点のひとつ。
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