鎌倉で海水浴を楽しんでいた青年「私」は、偶然出会った年上の男性を「先生」と呼んで慕うようになる。先生は知的で品格があるが、どこか孤独で人を寄せ付けない雰囲気を漂わせていた。東京に戻った私は先生の家を訪ね、美しい奥さんと共に暮らす先生との交流を深めていく。しかし先生は心に深い秘密を抱えており、毎月雑司ヶ谷の墓参りを欠かさない謎めいた行動を見せる。
やがて私の父が病気で倒れ、故郷で看病する中、先生から長い遺書が届く。そこには先生の暗い過去が綴られていた。学生時代、下宿先で出会った美しい娘お嬢さんを、親友のKと共に愛してしまった先生。お嬢さんへの想いを打ち明けようとするKを出し抜いて結婚を申し込み、絶望したKは自殺してしまう。友を裏切った罪悪感に苦しみ続けた先生は、明治天皇の崩御と乃木将軍の殉死を機に、ついに自らの命を絶つ決意を固める。
遺書を読んだ私が急いで駆けつけた時、先生はすでに帰らぬ人となっていた。友情と恋愛、裏切りと贖罪というテーマを通じて、人間の心の奥底に潜む利己心と道徳的苦悩を描いた、漱石文学の最高傑作の一つである。