「いき」の構造
九鬼周造1930年)
評論・思想12550,072哲学
あらすじ — 「いき」とは何か——日本独自の美意識を哲学的に解剖した名著
日本文化に特有な美意識概念である「いき」について、その構造を哲学的に解明した画期的な論考である。著者は冒頭で「いき」という言葉が他国語には完全に対応する語が存在しないことを指摘し、これが日本民族固有の存在様態の表現であることを論証する。西洋の「シック」「コケット」「ラフィネ」といった類似概念と比較検討しながら、「いき」の独自性を浮き彫りにしていく。 著者によれば「いき」は三つの構造的契機から成り立つ。第一に「媚態」-異性への関心を含む色っぽさ、第二に「意気地」-武士道的な気概や誇り、第三に「諦め」-仏教的な無常観や運命受容である。この三要素が絶妙に組み合わさることで、甘美に流れない洗練された美意識が生まれる。単なる色気でも品格でもない、緊張感を孕んだ独特な美的範疇として「いき」を位置づける。 ハイデガーの実存哲学的手法を用いながら、著者は「いき」を通して日本人の存在のあり方そのものを照射する。客観的な現象の分析を超えて、日本民族の歴史的体験が凝縮された生きた文化概念として「いき」を解釈し、東西文化の本質的差異に迫った記念碑的著作である。
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