明治期の文明開化により急速に変貌する武蔵野の原風景を、作者が実際に体験した季節の移ろいとともに描いた自然エッセイの傑作。独歩は渋谷村の茅屋に住みながら、古来より歌枡に詠まれた武蔵野の面影を求めて野や林を歩き回る。
作品は主に三つの要素で構成される。まず作者の日記を基にした、秋から冬にかけての武蔵野の自然描写。九月の南風と雲の変化から始まり、十月の月夜、十一月の黄葉、十二月の初雪、そして翌年三月の春の兆しまで、一日一日の気象の変化と心の動きが丹念に記録されている。
次に、現在の武蔵野の特色である楢の落葉樹林への深い洞察。ツルゲーネフの「あいびき」を引用しながら、従来の日本文学では注目されなかった落葉林の美しさを発見し、その四季の変化の妙を論じる。時雨の音、風の響き、鳥の声など、林に座して耳を澄ませることで感じられる自然の深い静寂と生命力を描写している。
最後に、武蔵野の広大な原野の魅力