変装の天才にして怪盗二十面相が東京を震撼させていた。彼は二十もの異なる顔を持ち、老若男女問わずどんな人物にも完璧に変装できるため、警察も手を焼いていた。血を嫌う二十面相は宝石や美術品のみを狙い、必ず事前に予告状を送る不敵な賊だった。
ある日、実業家羽柴壮太郎の邸宅に、ロマノフ王家の宝冠を飾っていた六個のダイヤモンド強奪の予告状が届く。価値二百万円の家宝を狙われた羽柴家は警察に保護を求め、厳重な警備体制を敷く。
そんな中、十年前に家出して南洋で成功を収めた長男壮一が帰国する。家族は喜びに沸くが、末っ子の壮二は二十面相の侵入を予感し、書斎の窓下の花壇に鉄の罠を仕掛ける。
やがて二十面相は壮一に変装して羽柴家に潜入していることが判明する。日本一の名探偵明智小五郎と少年助手小林芳雄が捜査に乗り出し、変幻自在の怪盗との壮絶な頭脳戦が展開される。果たして壮二の仕掛けた罠は功を奏するのか。知恵と知恵がぶつかり合う、探偵小説の傑作がここに始まる。