女学生の一日を、朝の目覚めから学校へ向かうまでの時間を通して描いた心理小説。主人公の少女は、朝目を覚ますときの複雑な気持ちを独特な比喩で表現し、自分の容貌や眼鏡への不満、父の死への困惑、母への敬愛などを率直に語る。庭で飼い犬のジャピイとカアに接する場面では、美しいものを愛し醜いものを遠ざけたがる自分の残酷さに気づく。
掃除をしながら無意識に「唐人お吉」を歌ってしまう自分に驚き、下着に薔薇の刺繍を施して密かな満足を覚える。台所で雑木林を眺めていると、過去・現在・未来が一体となる不思議な感覚を体験し、自分の感受性の豊かさと暇な身分への複雑な思いを抱く。
母からもらった古い傘を持って登校する際には、パリでの優雅な生活を空想し、現実とのギャップに苦笑する。神社の森で兵隊の馬の桶からこぼれた麦を見つけ、戦争の気配を感じ取る。駅近くで労働者たちから嫌な言葉をかけられ、どう対処すべきか戸惑いながら物語は終わる。思春期の少女の繊細で複雑な内面を、独白形式で鮮やかに描き出した傑作。