富嶽百景
太宰治1939年)
エッセイ3915,706自然
あらすじ — 富士山を見て、なにも書けなくなった作家の話
太宰治が富士山の描かれ方と実際の姿を比較する考察から始まり、やがて甲州御坂峠の天下茶屋で過ごした体験を綴った私小説的エッセイ。実測では富士の頂角は百二十度を超える鈍角なのに、浮世絵などでは鋭角に描かれることへの疑問を呈し、東京から見る富士への失望を語る。井伏鱒二を頼って御坂峠を訪れた作者は、最初「風呂屋のペンキ画」のような富士の景色を軽蔑するが、やがて地元の青年たちとの交流や見合い体験を通じて心境が変化していく。三ツ峠で霧に阻まれ写真で富士を見たり、偽坊主が犬に吠えられて狼狽する滑稽な場面も織り交ぜながら、最終的には黙々と立つ富士の偉大さを認めるに至る。自らの愛憎に翻弄される心の動きと対照的な富士の不動性を通して、人間の小ささと自然の包容力を描いた名作である。
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