僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?――というのは絶えずまはっている半透明の歯車だった。
芥川龍之介歯車」(1927)
私共と彼等とは、生きるために作られた人間であるということに何の差があろう?
宮本百合子貧しき人々の群」(1916)
お前はもう帰れ。俺たちは今日は向こう泊まりだから。
芥川龍之介トロッコ」(1922)
へべれけに酔っ払いたいなあ。そうして何もかも打ち壊して見たいなあ。
葉山嘉樹セメント樽の中の手紙」(1926)
春みじかし何に不滅ふめつの命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ
与謝野晶子みだれ髪」(1901)
時には風の音や鶴の鳴き声にも驚きました
福沢諭吉福翁自伝」(1899)
短い人生もああした人といっしょにいれば長生きができるだろう。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(28 野分)」(1914)
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ
石川啄木一握の砂」(1910)
半年以上もすれば梅の花が咲いて来る。果して病人の眼中に梅の花が咲くであろうか。
正岡子規病床六尺」(1902)
あなたが生んだという賢一郎は二十年も前に築港で死んでいる。
菊池寛父帰る」(1917)
お前さんは真っ先に私の肥料になったんだねえ
谷崎潤一郎刺青」(1910)
一軒の山家の前へ来たのには、さまで難儀は感じなかった。
泉鏡花高野聖」(1900)
梅も桜も桃も一時に咲いている、美しい岡の上をあちこちと立って歩いて、こんな愉快な事はないと、人に話しあった夢を見た。
正岡子規病床六尺」(1902)
そういうお前であるのなら、私はお前がもっともっと好きになるだろう。
堀辰雄風立ちぬ」(1938)