もどる
トロッコ
芥川龍之介(1922年)
約11分
4,358字
あらすじ — トロッコに乗りたかった少年が、帰り道で泣いた理由
小田原熱海間の軽便鉄道の工事現場。八歳の良平はトロッコに憧れていた。ある日、土工に誘われてついにトロッコに乗る。夢中で遠くまで来てしまった良平は、「帰りは歩きな」と言われる。暗くなる帰り道、一人で泣きながら走る少年。子どもの冒険心と恐怖を、芥川が完璧に描いた傑作。大人が読んでも胸が締めつけられる。
この作品のひとふみ
良平は毎日それを見る度に、 トロッコへ乗りたくてたまらなかった。
芥川龍之介
トロッコは線路を降りるように走り出した。 良平は眼を輝かせて、 両側の風景を見やった。
芥川龍之介
もう帰んな。 おれたちは今日はこっちに泊まるんだから。
芥川龍之介
良平はもう泣きたいのを我慢しながら、 一生懸命に走り続けた。
芥川龍之介
そのまた向うには夕焼けの空の下に、 ぼんやり薄紫に横たわっている海さえ見えた。
芥川龍之介
もう日が暮れる。―― そう思うと良平は一層走らずにはいられなくなった。
芥川龍之介
良平はとうとう泣き出した。 しかし足だけは止めなかった。
芥川龍之介
おうい。
芥川龍之介
やっとの事でそこまで来ると、 もう遠い薄暗がりの中にも、 見覚えのある家が何軒かあった。
芥川龍之介
既に二十六の良平には、 そんな事を思い出しても、 別段何とも思わない筈である。 しかし彼はどうかすると、 全然何の理由もないのに、 その時の彼を思い出す事がある。
芥川龍之介
本文を読む →