その皺だらけに痙攣った横顔を眺めながら、私は煙に捲かれたように茫然となっていた。今朝から私の周囲にゴチャゴチャと起って来る出来事が、何一つとして私に、新らしい不安と、驚きとを与えないものは無い……しかも、それに対する若林博士の説明が又、みるみる大袈裟に、超自然的に拡大して行くばかりで、とても事実とは思えない
夢野久作ドグラ・マグラ」(1935)
戸惑い、孤立感、現実喪失自分の身の上に起こったとは思えない事態の説明を聞かされているとき
どこからともなく、口笛で軍艦マアチが聞えて来たのです。
太宰治葉桜と魔笛」(1939)
不思議、震え説明できない不思議な体験に遭遇したとき
前にはあのようにつけつけとは哂わなんだて。
芥川龍之介」(1916)
孤独, 切なさ, 悲しみ自分の変化を周囲が受け入れてくれないことに気づいたとき
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か。」
新美南吉ごんぎつね」(1932)
共感、寂しさ自分と同じ孤独を抱える人を見つけたとき
平常から、犯罪だ探偵だと、議論丈は却々一人前にやってのける私だが、さて実際に打っつかったのは初めてだ。手のつけ様がない。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
無力感、現実への直面理想と現実のギャップに気づいたとき
金は何度もなくなった。 しかし蝶子のど根性は なくならなかった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
根性何度でも立ち上がりたいとき
メロスは激怒した。
太宰治走れメロス」(1940)
怒り怒りを感じた日に
行け。勇んで。小さき者よ。
有島武郎小さき者へ」(1918)
激励背中を押してほしいとき
これが一生さ。これがおれの晩年の安らぎさ
フランツ・カフカ変身」(0)
絶望, 諦念人生の無意味さに直面したとき
秋の半ば、十月の末から此の雑木林の変化は見事である。
国木田独歩武蔵野」(1898)
感動季節の変わり目に自然の美しさを感じたとき
お茶がおいしいときにも、 きっとお父さんを思い出す
太宰治女生徒」(1939)
切なさ大切な人を思い出すとき
ただ懲役に行かないで生きているばかりである。
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
虚無, 悲しみ, 諦念人生の意味を問いたくなったとき
嘘こけ! そんだったら、俺なんて社長になってねかならないべよ
小林多喜二蟹工船」(1929)
怒り, 諦観支配者の嘘に気づいたとき、搾取に気づいたとき
この糸に縋りついて、どこまでものぼって行けば、きっと地獄からぬけ出せるのに相違ございません。
芥川龍之介蜘蛛の糸」(1918)
希望絶望的な状況で予期しない救いを見つけたとき
私は有る、私は存在する、という命題は、私がこれを言表するたびごとに、あるいはこれを精神によって把握するたびごとに、必然的に真である、として立てられねばならぬ。
デカルト省察」(1641)
確実性の発見自分の存在に確信が持てないとき
私はこの小娘の下品な顔だちを好まなかった。 それからまた大きすぎる風呂敷包みが不快であった。
芥川龍之介蜜柑」(1919)
切なさ知らない人にイラッとしちゃうとき
鬼は元来平和を愛する種族だった。
芥川龍之介桃太郎」(1924)
衝撃、皮肉正義だと信じていたものの裏側を見てしまったとき
学問をさせると人間がとかく理屈っぽくなっていけない
夏目漱石こころ」(1914)
悲しみ, 断絶親と子の価値観が相容れないと感じたとき
私は leben せんためには denken しなければならないと思った。
倉田百三愛と認識との出発」(1921)
知的情熱なぜ学ぶのか、なぜ考えるのか迷ったとき
自然は美しかった。 恐ろしく美しかった。
有島武郎生れ出づる悩み」(1918)
畏怖自然の圧倒的な力を感じたとき