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その皺だらけに痙攣った横顔を眺めながら、私は煙に捲かれたように茫然となっていた。今朝から私の周囲にゴチャゴチャと起って来る出来事が、何一つとして私に、新らしい不安と、驚きとを与えないものは無い……しかも、それに対する若林博士の説明が又、みるみる大袈裟に、超自然的に拡大して行くばかりで、とても事実とは思えない
夢野久作「ドグラ・マグラ」
背景解説
主人公が自分のことなのに、まるで他人事のように感じちゃってる瞬間。博士の説明がどんどん大げさになっていくのを聞きながら、現実と非現実の境目がぐちゃぐちゃになって、自分が誰なのか分からなくなってく恐怖感が伝わってくるシーンです。
でもこの違和感、実はすべてが繋がる重大な真実の入り口だったとしたら?
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『ドグラ・マグラ』の他のひとふみ
……自分で自分を忘れてしまっている……。
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叫ぶたんびに深まって行く静寂の恐ろしさ……。
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タッタ一言……タッタ一言……御返事をして下されば……いいのです。
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俺は俺に間違いないじゃないか。
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……鳴呼。私が浅ましい狂人(きちがい)……。
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……ここはたしかに九州帝国大学の中の精神病科の病室に違いない。そうして私は一個の精神病患者として、この七号室? に収容されている人間に相違ないのだ。
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……空前の……空前の犯罪事件……僕が関係した……
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何という奇妙な私の立場であろう。何という恥かしい……恐ろしい……そうして不可解な運命であろう。
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最も公明正大な、且つ、最も遠まわしな科学的の方法によって、一分一厘の隙間(すきま)もなく私の心理を取り囲んで、私自身の手で直接に、私自身を彼女の恋人として指ささせようとしている。
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歯齦(はぐき)の血で描いたお雛様(ひなさま)の掛軸――(女子大学卒業生作)
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