哲学は現実の中から生れる。そしてそこが哲学の元来の出発点であり、哲学は現実から出立するのである。
三木清哲学入門」(1940)
力強さ哲学って何?と思ったとき
弱虫は、幸福をさえ おそれるものです。 綿で怪我をするんです。
太宰治人間失格」(1948)
切なさ幸せが怖いと感じるとき
おれは逃げも隠(かく)れもせん。今夜五時までは浜の港屋に居る。用があるなら巡査(じゅんさ)なりなんなり、よこせ
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
決意不正に立ち向かい、潔く決別を宣言したいとき
頭のいい人は、言わば富士のすそ野まで来て、そこから頂上をながめただけで、それで富士の全体をのみ込んで東京へ引き返すという心配がある。富士はやはり登ってみなければわからない
寺田寅彦科学者とあたま」(1933)
納得理解したつもりで済ませてしまうとき
親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
自嘲, 諦観自分の人生を冷徹に見つめたいとき
まづもろともにかがやく宇宙の微塵となりて無方の空にちらばらう
宮沢賢治農民芸術概論綱要」(1926)
解放感個を超えた何かと繋がりたいとき
ツマラナイカラヤメロトイヒ
宮沢賢治雨ニモマケズ」(0)
決意, 清潔感, 正直さくだらないことに惑わされているとき, 自分の軸を見失ったとき
滝は白い布を垂らしたように光って見えた。
太宰治魚服記」(1933)
美しさ、予感美しい風景の中に死の気配を感じるとき
その夜おれと山嵐はこの不浄(ふじょう)な地を離(はな)れた。船が岸を去れば去るほどいい心持ちがした。
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
解放感堕落した環境から脱け出し、自分らしく生きたいとき
何という奇妙な私の立場であろう。何という恥かしい……恐ろしい……そうして不可解な運命であろう。
夢野久作ドグラ・マグラ」(1935)
恐怖自分の過去が精神病院の標本室に隠されていると悟ったとき
法善寺横丁の水掛不動の前を 二人は並んで歩いた。 何度この道を通ったことか。 足が覚えている道であった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
郷愁いつもの場所に安らぎを感じるとき
椅子の中の恋(!)それがまあ、どんなに不可思議な、陶酔的な魅力を持つか、実際に椅子の中へ這入って見た人でなくては、分るものではありません。
江戸川乱歩人間椅子」(1925)
陶酔, 孤独, 危機感社会から隔絶された異常な世界に引き込まれていく自分に気付きながらも、抜け出せないとき
私は妻には何にも知らせたくないのです。妻が己れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存しておいてやりたいのが私の唯一の希望なのですから
夏目漱石こころ」(1914)
切なさ愛する者を傷つけたくないと思ったとき、また自分の秘密を抱えて孤独を感じるとき
最も公明正大な、且つ、最も遠まわしな科学的の方法によって、一分一厘の隙間(すきま)もなく私の心理を取り囲んで、私自身の手で直接に、私自身を彼女の恋人として指ささせようとしている。
夢野久作ドグラ・マグラ」(1935)
恐怖自分が巧妙に操られていることに気づいたとき
蠅は最も高い馬の耳の上に止まって、眼の下に落ちてゆく世界をじっと見おろしていた。
横光利一」(1923)
静寂、超越世界が崩壊する瞬間を、外から眺めるしかないとき
杜子春は寒さと恐しさとに、殆(ほとんど)気を失いそうになりましたが、しかし鉄冠子の言葉を覚えていましたから、唇を噛みしめたまま、じっと我慢をしていました。
芥川龍之介杜子春」(1920)
恐怖、忍耐恐ろしい状況でも何かを守るために耐え続けるとき
併し、あの電燈を消したのが犯人だとすれば、スイッチにその指紋が残っていなければなりません。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
決意論理的な推理で相手を追い詰めたいとき
すべてが退屈で、下等で、 退屈で仕方がなかった。
芥川龍之介蜜柑」(1919)
孤独世の中のすべてがつまらなく感じるとき
巧みな言葉、媚びるような表情、そうした技巧には、仁の影がうすい。
下村湖人現代訳論語」(1949)
戒め人の本心が見えなくて不安なとき
何アんだ、俺達と同じ人間ではないか、ということが、然し直ぐ分らさった。
小林多喜二蟹工船」(1929)
発見, 希望, 共感の転換ロシア人に助けられ、はじめての人間的なふれあいを経験したとき