昭和期の代表的哲学者による、哲学を学ぼうとする人々への格調高い案内書である。著者は冒頭で「哲学に入る門は至る所にある」と述べ、哲学が決して机上の空論ではなく、我々の日常的現実から生まれる切実な問いであることを明らかにする。
本書は単なる哲学史の概説ではない。著者は西田哲学を背景としながらも、独自の視点で哲学の本質に迫る。特に「真理の行為的意味」を重視し、現実を正しく見ることを教えない哲学は空語に等しいと喝破する。哲学は現実について考えるのではなく、現実の中から考えるものだという洞察が全編を貫く。
人間と環境の関係を軸に、我々がいかに世界の中で生き、働き、考えているかを分析する。従来の主観・客観という図式を批判し、行為する主体としての人間の在り方を探究する。哲学は基底の危機から生まれ、常識や科学が行き詰まるところから始まるが、それらを単に否定するのではなく、新たに自己のうちに生かすことで真に現実的になると論じる。
戦時下にありながら普遍的な人間の知的営みとしての哲学の意義を説いた、日本哲学史上の名著である。