真理はあらゆる人によって承認さるべき要求を含んでいる。
三木清哲学入門」(1940)
厳粛正しさについて考えたいとき
私は有る、私は存在する、という命題は、私がこれを言表するたびごとに、あるいはこれを精神によって把握するたびごとに、必然的に真である、として立てられねばならぬ。
デカルト省察」(1641)
確実性の発見自分の存在に確信が持てないとき
面白い時には、世界中が面白く、悲しい時には世界中が悲しい
小泉節子思い出の記」(1908)
没入、感情移入ヘルンの人間性の本質を理解したいとき、感情的に揺さぶられたいとき
「こ、こ、殺される前に、こっちから殺してやるんだ」どもりがブッきら棒に投げつけた。
小林多喜二蟹工船」(1929)
決意, 怒り, 絶望圧倒的な苦しみと不公正に直面して、最後の抵抗を示したいとき
美しい閨秀作家としての彼女は、此の頃では、外務省書記官である夫君の影を薄く思わせる程も、有名になっていた。
江戸川乱歩人間椅子」(1925)
誇り、逆転、力強さ自分の力を信じたいとき、夫の陰に隠れたくないとき
わざわざ東京から、こんな奴を教えに来たのかと思ったら情なくなった。
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
絶望、虚無感田舎の生徒たちの浅薄さに幻滅したとき
小娘はあの霜焼けの手をのばして、 窓から身体をのり出すが早いか、 窓の外の寒さに息をはずませながら、 勢いよく左右に振った。
芥川龍之介蜜柑」(1919)
決意大切な人のために必死になるとき
ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。
宮沢賢治山越え」(1921)
切実さ, 疲労空腹で限界を感じているとき
私たちが、日常のことで思い悩み、腹を立てたり、悲しんだりして疲れはてた時、ふと、自然を見て、「ああ、こんな美しい世界があるのを、すっかり忘れていた。どうして、これを忘れていたのだろう。」と何だか恥ずかしくなり、やがて、悲しみや、怒りを忘れてしまい、自然の景色の中につつまれ、「ああいいな」とうっとりとその中に吸い込まれていくことがある。
中井正一美学入門」(1941)
美への気づき日常に疲れて心が枯れそうなとき
アプリオリにはまるでこう云われません。もし二つの出来事が基準系 K に関して同時刻であるなら、同じ出来事は基準系 K' に関してもまた同時刻的であると。つまり時間は一の絶対な、すなわち基準系の運動状態に無関係な意味をもっているとは云われません。
アインシュタイン相対性理論」(1916)
常識の崩壊「当たり前」を疑いたいとき
ずるけてサボるんでねえんだ。働けねえからだよ
小林多喜二蟹工船」(1929)
悔しさ, 絶望自分の身体が限界に達したとき
役人どもは皆いちの顔を見た。そしてそこに現われている、人の力では動かすことの出来ぬ「諦めの色」を見た。
森鷗外最後の一句」(1915)
畏怖、緊張相手の覚悟の深さに圧倒されるとき
女は笑いながら、白い手をのべて、その蛇を掴んでひょいと投げた。
泉鏡花高野聖」(1900)
畏怖人間離れした存在に圧倒されたとき
御者は赤い西日の中に手綱を引き緊めると、鞭の先で遙か眼の下の町を指した。
横光利一」(1923)
緊張、美しさ美しい風景の中に潜む危険を感じ取りたいとき
私という男は、何という気違いでありましょう。それ程の苦しみを忍んでも、不思議な感触の世界を見捨てる気になれなかったのでございます。
江戸川乱歩人間椅子」(1925)
自己嫌悪, 狂気, 執着理性と欲望の間で葛藤し、自分の異常性に気づいたとき
へつらうまい驕るまいと気を使うのは、まだ君の心のどこかに、へつらう心や驕る心が残っているからではあるまいかの。
下村湖人論語物語」(1938)
衝撃自分の謙虚さに自信を持っていたとき
つまり卒業はお前に取ってより、このおれに取って結構なんだ。解ったかい
夏目漱石こころ」(1914)
切なさ, 愛情親の死を覚悟した父の真摯な思いを初めて理解するとき
日は傾きて風吹き酔いて人呼ぶ者の声も淋しく女は笑い児は走れどもなお旅愁をいかんともする能わざりき。
柳田国男遠野物語」(1910)
孤独, 切なさ祭りの賑わいに囲まれながらも、心が満たされないとき
極正直者でした。微塵も悪い心のない人でした。女よりも優しい親切なところがありました。ただ幼少の時から世の悪者共に苛められて泣いて参りましたから、一国者で感情の鋭敏な事は驚く程でした。
小泉節子思い出の記」(1908)
共感、哀しみ、尊敬純粋さゆえの生きづらさを感じているとき、人生経験が人格を作ることを実感するとき
私はこの子を銭湯に連れて行きはだかにして抱き上げて、あんまり小さく醜く痩せているので、凄しくなって、おおぜいの人の前で泣いてしまった事さえございました。
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
悲しみ、絶望貧困と育児放棄に苦しむとき