孔子と弟子たちの人間味豊かな姿を描いた感動的な物語集。下村湖人が『論語』の教えを現代的な視点で再話し、古典の言葉に生き生きとした人間ドラマを与えている。
物語は孔子の門下生たちの日常を通して展開される。裕福になった子貢が「貧しくても卑屈にならず、富んでも驕らない」ことの難しさを実感する話から始まり、不器用だが真っ直ぐな子路、病気がちながら最も優秀とされる顔回など、個性豊かな弟子たちが登場する。彼らは完璧な聖人ではなく、嫉妬や迷い、虚栄心といった人間らしい弱さを持ちながらも、孔子の教えを通じて成長していく。
孔子自身も神格化された存在ではなく、弟子たちの心の動きを深く理解し、時には厳しく、時には温かく導く師として描かれる。各話は『論語』の章句を核として構成されているが、単なる解説ではなく、現代人にも通じる普遍的な人間の悩みや喜びが巧みに織り込まれている。
古典の教えが現代の読者にとって身近で実践的な人生指針として蘇る、教育小説の傑作である。