明治33年から昭和初期までの約30年間にわたって与謝野晶子が創作した詩421篇を収録した詩集。短歌で名高い晶子の、もう一つの重要な表現形式である自由詩の全貌を示す貴重な作品集である。
収録作品は恋愛、家族愛、友情、自然讃美、社会批評など多岐にわたり、晶子の豊かな感性と思想の変遷を辿ることができる。初期の情熱的な恋愛詩から、結婚後の夫鉄幹や子どもたちへの愛情を歌った家庭詩、さらには賀川豊彦や堀口大学など文学者との交流を詠んだ作品まで、人生の各段階における心境が率直に表現されている。
特に注目すべきは、短歌の定型に縛られない自由な韻律の中で、晶子が内面の微細な感情の動きを捉えていることである。日常の些細な出来事—天井の鼠の音、庭の花々、読書の夜更け—から深い哲学的思索まで、女性の視点から現代生活を鋭く観察している。また「民衆の中に在るのか、外に在るのか」と問いかける社会意識も随所に見られ、単なる抒情詩を超えた現実批判の精神も感じられる。晶子文学の新たな一面を発見できる貴重な詩篇集である。