1845年、アメリカの思想家ソローは、マサチューセッツ州コンコードの町から一マイル半離れたウォールデン池のほとりで、独力で建てた小屋に移り住み、二年余りの独居生活を送った。本書はその実践的な生活記録である。
ソローは最小限の物質的欲望で暮らしながら、自然との深い交流を通じて人生の本質を探求した。畑を耕し、池の生態を観察し、森の四季を体験する中で、彼は現代文明の虚飾を鋭く批判し、簡素でありながら精神的に豊かな生活の可能性を示した。朝の清澄な空気、湖面に映る月光、森に住む小動物たちとの触れ合いを通じて、自然と人間の本質的な関係を詩的な筆致で描き出している。
単なる隠遁生活の記録ではなく、物質主義に追われる現代人への痛烈な問いかけでもある。「簡素な生活、高き想い」を実践したソローの思想は、真の豊かさとは何かを問い直し、自然と調和した生き方の価値を訴える。アメリカ古典文学の傑作として、今なお多くの読者に深い感銘と示唆を与え続けている不朽の名著である。