僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?――というのは絶えずまはっている半透明の歯車だった。
芥川龍之介歯車」(1927)
自分は神様から眼あきにしてやると言われてもお断りしたであろう
谷崎潤一郎春琴抄」(1933)
私はそういうものを身近に見て、素直に死にたいと思う。
岡本かの子老妓抄」(1938)
なかなかに折りやまどはん藤の花たそがれ時のたどたどしくば
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(33 藤のうら葉)」(1914)
しかし、下人は雨がやんでも、特別どうしようという当てはない。
芥川龍之介羅生門」(1915)
習慣は我々に最も身近なもの、我々の力のうちにある手段である。
三木清人生論ノート」(1941)
娘の時代だったならと取り返しのつかない運命が悲しかった。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(03 空蝉)」(1914)
はなやかな御生活をなさったことも皆過去のことになって。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(28 野分)」(1914)
人は高塔であった。馬は山であった。豚は丘のごとく、鶏は城楼と見える。
中島敦名人伝」(1942)
半身は砂のなかにうもれていて、それで居てべろべろ舌を出している。
萩原朔太郎月に吠える」(1917)
その家を畑ごとお前にやるから、早速行って住むが良い。今頃は丁度家の周りに、桃の花が一面に咲いているだろう。
芥川龍之介杜子春」(1920)