趙の紀昌は天下一の弓の名人を志し、飛衛に師事する。瞬きをしない修業を二年、小さな虱を大きく見る修業を三年重ね、ついに神技を会得する。師を超えようと決闘を挑むが敗れ、さらなる高みを目指して西の山で甘蠅老師に出会う。老師は弓を使わずに鳥を撃ち落とし、紀昌に「不射之射」の極意を示す。九年の修業を経て下山した紀昌は、もはや弓に触れることなく、無為の境地に達していた。都の人々は弓を執らない弓の名人として彼を崇めるが、老いた紀昌はある日、弓という道具の名前も用途も忘れてしまう。技を極めた果てに技そのものを超越した名人の、神秘的で皮肉な物語。