あの白熊のような犬が二匹、扉を突き破って室の中に飛び込んできました。
宮沢賢治注文の多い料理店」(1924)
あなたが生んだという賢一郎は二十年も前に築港で死んでいる。
菊池寛父帰る」(1917)
いくかへり行きかふ秋を過ごしつつ浮き木に乗りてわれ帰るらん
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(18 松風)」(1914)
麻酔薬はうわ言を言うと申すから、それが怖くてなりません。
泉鏡花外科室」(1895)
私はそういうものを身近に見て、素直に死にたいと思う。
岡本かの子老妓抄」(1938)
この馬鹿野郎と怒鳴った。この主人は人を罵るときは必ず馬鹿野郎というのが癖である。
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
コケモモの真の味が知りたかったら牛童かシャコに聞くがよい。
ソロー森の生活」(1854)
今に自分も、あの煙突から煙になって出るのだ。
小泉節子思い出の記」(1908)
あやふやな後宮の地位を与えられているようなことは、女として幸福なことではないのだ。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(31 真木柱)」(1914)
呪われた意地につきまとわれているゼラール中尉を憫まずにはいられなかった。
菊池寛」(1920)
ああ、この匂い……これはいつぞや、ダンスの教授のシュレムスカヤ伯爵夫人……
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
長い時間を中に置いていても、同じように愛し、同じように愛されようと望んでいる。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(11 花散里)」(1914)
道を歩いて常に見る若い美しい女、出来るならば新しい恋を為たいと痛切に思った。
田山花袋蒲団」(1907)