美学入門
中井正一1941年)
評論・思想20983,642哲学
あらすじ — 「美とは何か」を問い続けた哲学者が、やさしい言葉で解き明かす美の本質
中井正一が平易な語り口で美学の本質を解き明かした入門書である。美学とは真・善・美のうち「美とは何か」を探究する学問として位置づけられ、自然の美、技術の美、芸術の美という三つの観点から体系的に論じられている。 自然の美について、著者は私たちが疲れ果てた時に自然に触れて感じる解放感や安らぎに注目する。それは宇宙の大いなる秩序に包まれ、本来の自由な自分を発見する体験であり、シラーの言葉を引きながら「美しい魂」とは強い魂でもあると説く。芭蕉の「静かに観ずれば、物、皆自得す」という境地もこの文脈で語られる。 技術の美では、水泳のクロールやボートの実例を挙げ、正しいフォームを体得した時の快感を分析する。それは自然の法則とは異なる、人間が創造した新たな法則との調和である。日本刀や飛行機、桂離宮など、機能を純粋に追求した時に現れる美しさは、飾りのない率直さから生まれる。 そして芸術の美は、用途を離れて美しさそのものを追求する人間の創造活動として位置づけられる。戦時下に書かれながらも、美を通じて人間の本質的な自由と創造性を肯定する、希望に満ちた美学論である。
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