政敵一派の圧迫により、光源氏は自ら須磨への隠栖を決意する。京から遠すぎず、人里離れた須磨は、帝の勅勘を受けた身には相応しい場所と考えたのだった。しかし愛する紫の上は、どんな辺鄙な土地でも一緒について行きたいと懇願するが、源氏は彼女の身を案じて断念する。
出発を前に、源氏は各方面への別れを告げて回る。左大臣邸では、亡き葵の上の父である左大臣が涙ながらに源氏の境遇を嘆き、幼い夕霧との別れに心を痛める。密かに慕う中納言の君との最後の逢瀬も切ない。二条院に戻ると、従者たちの多くは既に散り散りとなり、かつての華やかさは見る影もない。
紫の上は、父である兵部卿宮からも見舞いがなく、継母からは冷やかな言葉を投げかけられる孤独な境遇にある。源氏は鏡に向かい痩せた自分の姿を見つめながら、「身はかくてさすらえぬとも君があたり去らぬ鏡の影は離れじ」と詠み、紫の上も「別れても影だにとまるものならば鏡を見てもなぐさめてまし」と返す。都を去る日が刻一刻と迫る中、源氏の心は愛する人々との別れの悲しみで満たされていく。