洪水のようにあふれて来たこの勢いを今は何者もはばみ止めることができない
島崎藤村破戒」(1906)
これでよしと。でも、うまくいくかしら。万一、賊がこいつに足くびをはさまれて、動けなくなったら、さぞ楽しいだろうなあ。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
あの蠟燭が尽きないうちに私が眠るか、またはコップ一杯の酔いが覚めてしまうか、どちらかでないと、キクちゃんが、あぶない。
太宰治」(1947)
そのとたん、私たちは同時に「アッ」と声を立てた。明るくなった部屋の片隅には、女の死骸が横たわっているのだ。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
自分は神様から眼あきにしてやると言われてもお断りしたであろう
谷崎潤一郎春琴抄」(1933)
これならば完全だ、欠点がないという女は少ないものだと私は今やっと気がつきました。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(02 帚木)」(1914)
非人情でなくっちゃ、こうは動けませんよ
夏目漱石草枕」(1906)
私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいもののために走っているのだ。
太宰治走れメロス」(1940)
あいつはいつも歪んだ顔をして、窓のそばに突っ立っている。
萩原朔太郎月に吠える」(1917)
誰でも絶えず努力しているものは、われ等が救うことが出来る。
ゲーテファウスト」(1808)
ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは。
新美南吉ごんぎつね」(1932)
私の手は空っぽである。何も私は持っていない。
宮本百合子貧しき人々の群」(1916)
どんよりとくもれる空を見ていしに人を殺したくなりにけるかな
石川啄木一握の砂」(1910)
今に自分も、あの煙突から煙になって出るのだ。
小泉節子思い出の記」(1908)