明治末期に発表された人生論の金字塔であり、努力と運命の関係を深く考察した思想書である。露伴は冒頭で努力を直接的努力と間接的努力の二種に分類し、多くの人が準備となる間接的努力を怠り、目先の直接的努力のみに頼るために成果を得られないと指摘する。真の努力とは、努力していることを忘れて自然に行う境地であり、それに至るには愛か捨の道を体得する必要があると説く。
「運命と人力と」の章では、運命前定説を排し、英雄的気概を持って自ら運命を創造すべきことを論じる。成功者は自己の力を信じ、失敗者は運命のせいにする傾向があるが、実際は運命と人力の両方が存在し、好運を招くには自己を厳しく責める精神が必要だと分析する。他にも自己革新論、幸福論、修学の指針など多岐にわたる人生の智慧が展開される。
全編を通じて、儒教や仏教の思想を基盤としながら、実践的で力強い人生哲学が語られる。単なる精神論ではなく、具体的な観察と洞察に基づいた論考は、現代でも色褪せない普遍的な価値を持つ。努力の真髄を追求し、人間の可能性を最大限に引き出すための指針を示した、日本近代思想史上屈指の名著である。