わしは人の野宿をしそうな森の中や橋の下を尋ね回って、これまで大勢の人を連れて帰った。
森鷗外高瀬舟」(1916)
二年の後には、激しく往復する踏み木が睫毛(まつげ)をかすめても、絶えて瞬くことがなくなった。
中島敦名人伝」(1942)
多くの人々は一度も本当の自分に巡り合わずに死んでいっているのである。
中井正一美学入門」(1941)
底のきれいでない水に映る月は曇らないはずはないのだからね
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(26 常夏)」(1914)
私はこの時初めて、言いようのない疲労と倦怠とを、そして又不可解な、下等な、退屈な人生を僅かに忘れることができたのである。
芥川龍之介蜜柑」(1919)
俺たちに父親があるものか、あればあんな苦労はしていない。
菊池寛藤十郎の恋」(1919)
立派な身なりの、五十年配の奥さんが、椿屋の勝手口にお酒を売りに来て、一升三百円、とはっきり言いまして。
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
じゃ、いいことを教えて上げるわ。水道の水を頭からザッと浴びるといいわ
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ
石川啄木一握の砂」(1910)
金が足りぬ。良いわ。金をこしらえい
ゲーテファウスト」(1808)
ええ。これまでじゃ。奥様、ご免下さいまし
森鷗外高瀬舟」(1916)
私のために門閥制度は親の敵でございる。
福沢諭吉福翁自伝」(1899)
私には思想なんてものはありませんよ。好き、嫌いだけですよ。
太宰治黄金風景」(1939)
そういうお前であるのなら、私はお前がもっともっと好きになるだろう。
堀辰雄風立ちぬ」(1938)
というのは、彼はいきなりゲラゲラと笑い出したのです。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)