語り手である画家が、友人の医学士高峰の手術を見学するため病院を訪れる。患者は貴船伯爵夫人という高貴な女性で、胸部の重篤な病気を患っていた。手術には麻酔が必要だったが、夫人は「心に秘密がある」として麻酔を拒否する。麻酔で意識を失えば、うわ言でその秘密を漏らしてしまうことを恐れたのだ。夫である伯爵や親族が説得しても頑として聞き入れない。ついに高峰は麻酔なしでの手術を決断する。メスが骨に達した瞬間、激痛に耐えきれず夫人は高峰の腕にすがりつき「あなただから」と告白し、自らメスを深く押し込んで絶命する。物語は九年前の植物園での高峰と夫人の出会いを暗示して終わる。