恋しい藤壺の宮によく似ているからだと気がついた瞬間にも、思慕の涙が熱く頬を伝わった。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(05 若紫)」(1914)
僕はお母さんが、本当に幸せになるなら、どんなことでもする。
宮沢賢治銀河鉄道の夜」(1934)
あなたが死んでしまうのよ。雨宮潤一という人間を殺してしまうのよ
江戸川乱歩黒蜥蜴」(1934)
つくづく自動車はいやだ。今日はすんでの事に殺されるところさ。
永井荷風濹東綺譚」(1937)
まるで疲れ果てた人のように仰向けに寝ていた。
柳田国男遠野物語」(1910)
努力は功の有無によって、これを敢えてすべきか否かを判断すべきものではない。
幸田露伴努力論」(1912)
どうしても我ら猫族が親子の愛を全うするには人間と戦ってこれを滅ぼさねばならない。
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
雲雀はきっと雲の中で死ぬに違いない。
夏目漱石草枕」(1906)
えらい駆け落ちをしてしまったという悔いが一瞬あった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
私は黙って俯向うつむいていた。何を言っても駄目だ。何も言うまいと心で誓った。
室生犀星幼年時代」(1919)
われわれが死ぬまでにはこの世の中を少しなりとも善くして死にたいではありませんか
内村鑑三後世への最大遺物」(1897)
男には、不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです。
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
まったく美しいものを美しいままで終わらせたいなどと願うことは小さな人情で、私は二十の美女を好む。
坂口安吾堕落論」(1947)
俺たちには、俺たちしか味方がねえんだな。初めて分かった
小林多喜二蟹工船」(1929)