幼年時代
室生犀星1919年)
小説5432,230孤独悲哀成長
あらすじ — 家族って何?少年の心の叫び
一人の少年が養子先から実家へ頻繁に通う日々を描いた自伝的小説である。主人公は養家で暮らしながらも、本当の両親への愛慕を抑えきれず、毎日のように実家を訪れる。実の母は色白で優しく、いつも菓子を器に盛って客のようにもてなしてくれる。父は元武士らしい威厳ある人物で、広い果樹園で野菜や果物を育てながら俳句を嗜んでいる。少年は杏の木に登り、美しく熟した果実を頬張りながら至福の時を過ごす。 しかし養家に帰ると、養母から実家通いを咎められ、嘘をついてしらを切る自分に罪悪感を覚える。家には嫁入り先から戻った姉がおり、なぜか陰鬱な様子で針仕事をしている。姉は美しい貝殻や小物を持っており、少年はそれらを分けてもらいながら親しくなる。夜は姉と並んで寝て、加賀藩の河師・堀武三郎の不思議な冒険譚を聞かせてもらう。 物語は少年の複雑な心境を丁寧に描写しながら進む。実の親への愛情と養家への義理、真実を語りたい気持ちと嘘をつかざるを得ない状況の板挟みに苦しむ姿が、明治の家族制度の中で翻弄される子供の心理として鮮やかに浮かび上がる。室生犀星の繊細な文体が、幼年期の甘美さと切なさを余韻深く描き出している。
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