「ナオミを『偉くすること』と、『人形のように珍重すること』と、この二つが果して両立するものかどうか?―――今から思うと馬鹿げた話ですけれど、彼女の愛に惑溺して眼が眩んでいた私には、そんな見易い道理さえが全く分らなかったのです。」
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
後悔、自己欺瞞への気づき、絶望自分の矛盾した願いに気づき、それが実現不可能だったことを認識するとき
大部分の贅沢は、そして多くのいわゆる人生の慰安物は、人類の向上にとって不可欠でないばかりでなく、積極的な妨害物である。
ソロー森の生活」(1854)
反省モノを買っても満たされないとき
けれども爺さんは、とうとう上がって来なかった。
夏目漱石夢十夜」(1908)
切なさ, 喪失感, 儚さ何か大切なものを失ってしまったとき、期待と現実のズレに直面したとき
ミンナニデクノボートヨバレ ホメラレモセズ クニモサレズ
宮沢賢治雨ニモマケズ」(0)
孤独, 悲しみ, 自己否定自分の存在を誰からも認められていないと感じるとき
新時代の青年をもってみずからおる三四郎は少し小さくなっていた。
夏目漱石三四郎」(1908)
自意識, 挫折, 劣等感理想と現実のギャップに直面したとき
何アんだ、俺達と同じ人間ではないか、ということが、然し直ぐ分らさった。
小林多喜二蟹工船」(1929)
発見, 希望, 共感の転換ロシア人に助けられ、はじめての人間的なふれあいを経験したとき
頭の悪い人足ののろい人がずっとあとからおくれて来てわけもなくそのだいじな宝物を拾って行く場合がある
寺田寅彦科学者とあたま」(1933)
希望自分は要領が悪いと落ち込んだとき
形体以外の活動を見る能(あた)わざる者に向って己霊(これい)の光輝を見よと強(し)ゆるは、坊主に髪を結(い)えと逼(せま)るがごとく、鮪(まぐろ)に演説をして見ろと云うがごとく、電鉄に脱線を要求するがごときものである。
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
怒り, 諦観, ユーモア自分の努力が報われず、他者に理解されないと感じたとき
日は傾きて風吹き酔いて人呼ぶ者の声も淋しく女は笑い児は走れどもなお旅愁をいかんともする能わざりき。
柳田国男遠野物語」(1910)
孤独, 切なさ祭りの賑わいに囲まれながらも、心が満たされないとき
人は生まれながらにして貴賤・貧富の別なし。ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり。
福沢諭吉学問のすすめ」(1872)
希望自分の身分や環境に不満を感じたときや、人生を変えたいと思ったとき
あの偉大な破壊の下では、運命はあったが、堕落はなかった。無心であったが、充満していた。
坂口安吾堕落論」(1947)
喜び, 希望, 清潔感今の世の中に失望し、本質的な生き方を求めたいとき
それから三人はそろって住居を出た。もう何カ月もなかったことだ。
フランツ・カフカ変身」(0)
解放苦しみから解放された喜びを感じたいとき
われわれが死ぬときには、われわれが生まれたときより、世の中を少しなりともよくして往こうではないか
内村鑑三後世への最大遺物」(1897)
決意自分の人生の意味を見出したいとき
おうい。
芥川龍之介トロッコ」(1922)
好奇心知らない大人に声をかけられたとき
別にこれという分別も出ない。
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
無力感・孤独困難な状況下で判断力を失ったとき、将来への不安に襲われたとき
それに、こんなことをしたら、まるで家具を片づけることによって、わたしたちがあの子のよくなることをまったくあきらめてしまい、あの子のことをかまわずにほったらかしにしているということを見せつけるようなものじゃないかい?
フランツ・カフカ変身」(0)
切なさ、悲しみ、愛情家族がグレゴールの部屋の家具を片づけようとするとき
それは私自身に取って忘れがたない貴い記録であると同時に、恐らくは読者諸君に取っても、きっと何かの参考資料となるに違いない。
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
決意自分の人生を記録に残したいと思ったとき
おれは人殺(ひとごろし)であったんだなと始めて気がついた途端(とたん)に、背中の子が急に石地蔵のように重くなった。
夏目漱石夢十夜」(1908)
絶望, 罪悪感, 恐怖自分の隠された罪と向き合わされたとき
良平はもう泣きたいのを我慢しながら、 一生懸命に走り続けた。
芥川龍之介トロッコ」(1922)
孤独泣きたいけど泣けないとき
堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない。
坂口安吾堕落論」(1947)
決意底まで落ちてしまった時、どう前に進むか迷っているとき