人間というものは角の生えない、青白い顔や手足をした、何ともいえず気味の悪いものだよ。
芥川龍之介桃太郎」(1924)
立派な身なりの、五十年配の奥さんが、椿屋の勝手口にお酒を売りに来て、一升三百円、とはっきり言いまして。
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
媚態の要は、距離を出来得る限り接近せしめつつ、距離の差が極限に達せざることである。
九鬼周造「いき」の構造」(1930)
あんなことをなぜしてしまったんだろう。取り返しのつかないことになってしまった。
有島武郎一房の葡萄」(1920)
貧乏でも人にへつらわない、富んでも人に驕らない。
下村湖人現代訳論語」(1949)
借金を返しちまったら。あなた、おかみさんにしてくれない。
永井荷風濹東綺譚」(1937)
何になっても、人間らしい、正直な暮らしをするつもりです。
芥川龍之介杜子春」(1920)
我より福を分ち与うれば、人もまた我に福を分ち与うべく、天道は復すことを好む。
幸田露伴努力論」(1912)
まるで蚕に食われている桑の葉のように、俺たちの身体が殺されているんだ
小林多喜二蟹工船」(1929)
私を取り巻く人の運命が、大きな輪廻のうちに、そろそろ動いているように思われた。
夏目漱石こころ」(1914)
昨日の正しさが今日の誤りになる、そういう瞬間瞬間の感覚を、ペンで写して誰に見せるのか。
森鷗外舞姫」(1890)
なんという火だ。この燃え立って取り巻くのは、愛か、憎か
ゲーテファウスト」(1808)
いかなる小事にあたっても、なにかことをなすときは、ちょっと退いて考えたい。
新渡戸稲造自警録」(1916)