多くの人々は一度も本当の自分に巡り合わずに死んでいっているのである。
中井正一美学入門」(1941)
それから、また元のところに帰って、こっくりこっくり眠り始めました。
新美南吉飴だま」(1943)
半年以上もすれば梅の花が咲いて来る。果して病人の眼中に梅の花が咲くであろうか。
正岡子規病床六尺」(1902)
人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。
坂口安吾堕落論」(1947)
我輩は新年来多少有名になったので、猫ながらちょっと鼻が高く感じられる
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
君の杖を立ててその倒れた方に往きたまえ。
国木田独歩武蔵野」(1898)
生きているということ。ああ、それは、何というやりきれない息も絶え絶えの大事業だろうか。
太宰治斜陽」(1947)
真の懐疑家はソフィストではなくてソクラテスであった。
三木清人生論ノート」(1941)
暗闇の世界の恋でございます。決してこの世のものではありません。
江戸川乱歩人間椅子」(1925)
二年の後には、激しく往復する踏み木が睫毛(まつげ)をかすめても、絶えて瞬くことがなくなった。
中島敦名人伝」(1942)
洪水のようにあふれて来たこの勢いを今は何者もはばみ止めることができない
島崎藤村破戒」(1906)
愚か者と見える。名はわしがつけてやる。姉は病気を垣衣、弟は忘れ草を萱草だ。
森鷗外高瀬舟」(1916)