智恵子抄
高村光太郎1941年)
詩・短歌・俳句6136,370恋愛抒情詩
あらすじ — 愛と狂気と死を描いた永遠の詩
本作は、詩人高村光太郎が妻智恵子への愛を歌った珠玉の詩集である。智恵子との出会いから結婚、そして彼女の精神的破綻と死に至るまでの約三十年間の愛の軌跡が、時系列に沿って収められている。 冒頭の「いやなんです」では、友人の結婚を嘆く智恵子の心情を通して、芸術に生きる女性の純粋さが描かれる。「或る夜のこころ」「涙」などの初期作品では、二人の恋愛感情が官能的かつ象徴的な言葉で表現される。結婚後の「人に」「人類の泉」では、愛する喜びと創作への情熱が力強く歌われる。 しかし智恵子の心の病が進行するにつれ、詩の調子は次第に悲痛なものとなる。「風にのる智恵子」では既に現実と幻想の境界が曖昧になった智恵子の姿が、「値ひがたき智恵子」では病院での痛ましい様子が描かれる。そして「レモン哀歌」で、臨終の床で智恵子がレモンの香りに一瞬正気を取り戻す場面が、抑制された美しい言葉で綴られる。最後の「荒涼たる帰宅」では、智恵子亡き後の光太郎の絶望的な孤独感が表現される。 純愛の讃美から死別の悲哀まで、人間の愛のあらゆる局面を詩的言語で昇華させた、日本近代文学史上屈指の愛の記録である。
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