すべてのことは昔より悪くなっていく末世でも、仮名の字だけは近頃の方がよくなった。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(32 梅が枝)」(1914)
名前なんてどうでもいいじゃないか。忘れたって全然不自由はしない。
夢野久作ドグラ・マグラ」(1935)
男には、不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです。
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
しかし東京ないし大阪のようになるということは、必ずしもこれらの都市が踏んだと同一な発達の道筋によるということではない。
芥川龍之介魔術」(1920)
年寄の女に向って年齢のことを気遣うのなども、もう皮肉に気持ちがこずんで来た証拠だね
岡本かの子老妓抄」(1938)
母ちゃん、お星さまは、あんな低いところにも落ちてるのねえ
新美南吉手袋を買いに」(1943)
えらい駆け落ちをしてしまったという悔いが一瞬あった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
私は生きなかったということを発見することがないように欲したからである
ソロー森の生活」(1854)
「私、なぜだか、ああしたかったんですもの」
夏目漱石三四郎」(1908)
春は眠くなる。猫は鼠を捕ることを忘れ、人間は借金のあることを忘れる。
夏目漱石草枕」(1906)
私は黙って俯向うつむいていた。何を言っても駄目だ。何も言うまいと心で誓った。
室生犀星幼年時代」(1919)