二人は何度も商売に手を出しては 失敗した。しかし二人でいる限り、 不思議と世の中が 終わった気はしなかった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
安心何度失敗しても隣にいてくれる人がいるとき
舟に残れるは余一人のみなれば。
森鷗外舞姫」(1890)
孤独帰郷を前にして、すべての人間関係が遠ざかるのを感じたとき
平常から、犯罪だ探偵だと、議論丈は却々一人前にやってのける私だが、さて実際に打っつかったのは初めてだ。手のつけ様がない。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
無力感、現実への直面理想と現実のギャップに気づいたとき
歯齦(はぐき)の血で描いたお雛様(ひなさま)の掛軸――(女子大学卒業生作)
夢野久作ドグラ・マグラ」(1935)
戦慄、狂気、悲しみ精神病院の現実に直面したとき、人間の極限の表現を目撃したとき
徒手空拳(としゅくうけん)、南洋の島へおしわたって、今日(こんにち)の成功をおさめたほどの快男児ですから、この人さえ帰ってくれたら、家内のものは、どんなに心じょうぶだかしれません。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
希望危機的状況にありながら、心の支えを求めるとき
やっぱり、日本人は、同じ日本人に対してでなければ、本当の恋を感じることが出来ないのではあるまいか。
江戸川乱歩人間椅子」(1925)
切なさ、渇望異国人との関係に精神的な満たされなさを感じているとき
走れ!メロス。
太宰治走れメロス」(1940)
決意自分を奮い立たせたいとき
表の大通りには往来が絶えない。声高に話し合って、カラカラと日和下駄を引きずって行くのや、酒に酔って流行唄をどなって行くのや、至極天下泰平なことだ。そして、障子一重の家の中には、一人の女が惨殺されて横わっている。何という皮肉だ。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
虚脱感、怒り、無力感日常と非日常のギャップに直面したとき
私は妻には何にも知らせたくないのです。妻が己れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存しておいてやりたいのが私の唯一の希望なのですから
夏目漱石こころ」(1914)
切なさ愛する者を傷つけたくないと思ったとき、また自分の秘密を抱えて孤独を感じるとき
こう云う風に、幾晩となく母が気を揉んで、夜の目も寝ずに心配していた父は、とくの昔に浪士のために殺されていたのである。
夏目漱石夢十夜」(1908)
悲しみ絶望を知りたいとき、無意味な努力について考えるとき
ただ口の中で迷羊(ストレイ・シープ)、迷羊(ストレイ・シープ)と繰り返した。
夏目漱石三四郎」(1908)
孤独, 迷走, 虚無感人生の方向性を見失ったとき、自分の気持ちを言葉にできないとき
私は丁度あの「やどかり」でございました。貝殻の代りに、椅子という隠家を持ち、海岸ではなくて、ホテルの中を、我物顔に、のさばり歩くのでございます。
江戸川乱歩人間椅子」(1925)
快感、自由、狂気自分の行動を客観視したいとき、または倫理観と欲望の葛藤に苦しむとき
では彼は一体どうしたのであろう。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
困惑, 驚き密室から逃げ場のない犯人の痕跡を前にしたとき
あれは薬を使うのではない、法の力でもない、ただ膚の美しさに因って人間が畜生になるのだ。
泉鏡花高野聖」(1900)
戦慄欲望の恐ろしさに気づいたとき
大阪の街は どん底の二人にも優しかった。 安い飯屋の湯気の向こうに、 人間の温もりがあった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
温もりお金はなくても幸せを感じるとき
「坊や、お手々がつめたかろう。おっかさんおててをつつんであげましょうね。」
新美南吉手袋を買いに」(1943)
母性、温かさ無条件の愛を感じるとき
真摯に生きんとする人は必ず熱烈なる宗教的要求を感ぜずには居られないのである。
倉田百三愛と認識との出発」(1921)
精神の渇望何かを信じたい、すがりたいと感じるとき
天は富貴を人に与えずして、これをその人の働きに与うるものなり
福沢諭吉学問のすすめ」(1872)
決意努力すれば人生が変わると信じたいとき、または努力の価値を確認したいとき
女の姿は花びらにすかされ花びらのようにすきとおりそして何もなくなってしまいました。
坂口安吾桜の森の満開の下」(1947)
喪失、幻想、美愛するものが消えていくとき
美しい勇気と、如何に正直の心だと云うので、ひどく賞めていました
小泉節子思い出の記」(1908)
切なさ枯れゆく朝顔の最期の花を見つめるとき