美貌の女性作家佳子のもとに、ある日一通の奇怪な告白文が届く。それは醜い容貌に生まれついた椅子職人からの手紙であった。彼は自分の作った椅子に異常な愛着を抱き、ついに椅子の内部に身を潜めることのできる仕掛けを施し、実際にその中に隠れて椅子と共にホテルへ運ばれていく。椅子はホテルのロビーに置かれ、職人は椅子の中から様々な人々を観察する異様な生活を送る。やがて佳子自身がそのホテルを訪れ、まさにその椅子に腰かけることになる。職人は椅子の中から彼女の美しさに魅了され、密かに彼女を崇拝し続ける。しかし長期間の潜伏生活で心身ともに限界に達した職人は、ついに自らの異常な行為を佳子に告白する手紙を書く。彼は佳子に会うことを懇願するが、同時に自分の醜悪な姿を見られることへの恐怖も吐露する。この作品は人間の歪んだ欲望と美への憧憬を、グロテスクでありながら哀切な筆致で描いた乱歩の代表的怪奇小説である。