僕の可愛いナオミちゃん、僕はお前を愛しているばかりじゃない、ほんとうを云えばお前を崇拝しているのだよ。お前は僕の宝物だ、僕が自分で見つけ出して研きをかけたダイヤモンドだ。
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
執着、支配欲、歪んだ愛情結婚を決めた直後に、ナオミに対して自らの感情を告白するとき
もう、こんな事が三日も続けば、キット死んでしまう人もいます。――ちょっとでも金のある家ならば、まだ学校に行けて、無邪気に遊んでいれる年頃の私達は、こんなに遠く……
小林多喜二蟹工船」(1929)
切なさ, 悲しみ, 決意不公正さに怒りを感じ、声を上げたいとき
私は今の私を恥ずかしいとは思わない。然し満足しているとも思わない。
有島武郎小さき者へ」(1918)
誠実自分の不完全さを認めるとき
いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。 もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさん よくもみ込んでください。
宮沢賢治山越え」(1921)
恐怖自分たちが罠にかかっていることに気づくとき
行け。勇んで。小さき者よ。
有島武郎小さき者へ」(1918)
激励背中を押してほしいとき
彼等は女心の変り易さを知らなかったわけではなく、知りすぎていたので、こういう禁止項目を案出に及んだまでであった。
坂口安吾堕落論」(1947)
怒り、諦観権力者の本音を知りたいとき、支配構造の矛盾に気づいたとき
二人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。
宮沢賢治山越え」(1921)
絶望, 悲しみ, 無力感もう何もできないことを悟ったとき
ただ懲役に行かないで生きているばかりである。
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
虚無, 悲しみ, 諦念人生の意味を問いたくなったとき
名人紀昌は終に弓を手にしなくなった。
中島敦名人伝」(1942)
超越、静寂何かを極めた先にあるものを知りたいとき
言葉や様子こそあまり上品じゃないが、心はこいつらよりも遥かに上品なつもりだ。
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
自尊心、矛盾への自覚自分の非礼を認めつつも、生徒たちの卑怯さに怒りを感じるとき
これは恐ろしいディレンマです。ところがよく考えると自然はこのディレンマには全く負い目をもってはいないので、むしろこのディレンマは私達がその考察のなかに、黙って勝手に仮定をつくっていたことから起るのです。
アインシュタイン相対性理論」(1916)
発想の転換解決不能に見える問題に直面したとき
どうも奥には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、貴族とちかづきになるかも知れないよ。
宮沢賢治山越え」(1921)
希望と自信危険な状況を楽観的に解釈したいとき
母の考えでは、夫が侍であるから、弓矢の神の八幡へ、こうやって是非ない願をかけたら、よもや聴かれぬ道理はなかろうと一図に思いつめている。
夏目漱石夢十夜」(1908)
切なさ誰かを信じたいとき、儚い希望について考えるとき
へつらうまい驕るまいと気を使うのは、まだ君の心のどこかに、へつらう心や驕る心が残っているからではあるまいかの。
下村湖人論語物語」(1938)
衝撃自分の謙虚さに自信を持っていたとき
武蔵野の俤は今纔かに此の大きな林に残っている。
国木田独歩武蔵野」(1898)
哀愁昔の面影がわずかに残る場所を訪れたとき
譲治さん、あたしもう止めるわ
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
決意期待が裏切られたとき
御者は赤い西日の中に手綱を引き緊めると、鞭の先で遙か眼の下の町を指した。
横光利一」(1923)
緊張、美しさ美しい風景の中に潜む危険を感じ取りたいとき
新時代の青年をもってみずからおる三四郎は少し小さくなっていた。
夏目漱石三四郎」(1908)
自意識, 挫折, 劣等感理想と現実のギャップに直面したとき
願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。
柳田国男遠野物語」(1910)
切望, 使命感忘れられた物語を世に知らしめたいとき
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは。」
新美南吉ごんぎつね」(1932)
悲しみ、後悔、衝撃真実を知ったのが遅すぎたとき