源氏は六条の恋人のもとへ通う途中、乳母の見舞いに立ち寄った際、隣家に咲く夕顔の花に目を留める。花を折らせると、美しい扇に歌を添えて返され、風流な女性の存在を知る。源氏が返歌を送ると、やがて文のやり取りが始まり、ついに密かな逢瀬を重ねるようになる。
女性は身分を隠しているが、源氏への愛情は深く純粋だった。しかし、ある夜、人里離れた廃院で密会していた時、夕顔は突然原因不明の病に倒れ、源氏の腕の中で儚く息を引き取ってしまう。
実は夕顔は、かつて源氏の親友・頭中将の恋人だった女性で、彼との間に娘をもうけながらも、正妻の嫉妬を恐れて姿を隠していたのだった。源氉は深い悲しみに暮れ、夕顔の遺児である玉鬘の行く末を案じる。
この巻は、身分の違いを超えた純愛の美しさと、突然の死による別れの無常感を描いた物語として、源氏物語の中でも特に印象深い悲恋談となっている。夕顔という薄幸の女性の儚い美しさが、読者の心に深い余韻を残す名篇である。