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涯しない花の下の涯しい虚空をみたしているものは何だろう。
坂口安吾「桜の森の満開の下」
背景解説
桜の下にあるのは美しさじゃなくて「虚空」。この問いかけがこの作品の核心で、美しいものの下には必ず空っぽの何かがある、っていう安吾の哲学が凝縮されてる。
桜の美しさの裏にある「虚空」とは何か?
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『桜の森の満開の下』の他のひとふみ
桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれて陽気になりますが、これは嘘です。
坂口安吾
昔、桜の花の下は怖ろしいと思っても、誰も関りのないことでした。
坂口安吾
彼は女の美しさに関して何の理解もありませんでしたが、ただ彼が感じたのは、これは俺の手に負えぬ怖ろしい何ものかだということでした。
坂口安吾
女の顔にはいつも何一つ表情というものがなく、それは怖ろしいほど美しく、恐ろしい顔でした。
坂口安吾
女は首が関り合いのある人間のものであるかないかということは全く念頭にはないようでした。それは蒐集家の態度にすぎませんでした。
坂口安吾
山賊はふりかえって見ましたが都が見えませんでした。ただ一面に連る桜の花があるだけでした。
坂口安吾
桜の森の満開の下の秘密は誰にも今も分りません。あるいは「孤独」というものであったかも知れません。
坂口安吾
けれども花と関りのない孤独は恐ろしくはなかったのです。
坂口安吾
女の姿は花びらにすかされ花びらのようにすきとおりそして何もなくなってしまいました。
坂口安吾
そしてそれが花の精かも知れないと怖れることだけは忘れませんでした。
坂口安吾
彼はもう花の下にねることもその冷めたい花びらが降りかかる下に寝ることも怖ろしいとは思いませんでした。
坂口安吾
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