太宰治が自身の思想遍歴を振り返る私小説的作品。明治天皇崩御の記憶から始まり、小学生時代にデモクラシーの思想に触れ、下男たちに平等思想を説いた体験を回想する。作者は「思想の発展」という概念に反発し、劇的な転機を語る思想家たちの回想録を嘘くさいものとして批判する。津軽の大地主の家に生まれた自身の出自を語り、幼少期の読書体験、博愛主義や救世軍への冷めた視線、そしてプロレタリア革命思想への傾倒と挫折を描く。革命に憧れながらも金持ちの息子である矛盾に悩み、自殺未遂まで起こす。結局は同志たちの偽善や小物ぶりに幻滅し、思想というよりも「好き嫌い」だけで生きていると告白する、太宰らしい屈折した自己省察の物語。