療養地で不眠に悩む「私」は、満月の夜に海辺で奇妙な行動をとる青年Kと出会う。Kは月光の下で自分の影を見つめ続けており、それは「阿片のようなもの」だと語る。影をじっと見つめていると、その中に自分自身の姿が現れ、やがて影の方が人格を持ち始める一方で、本体の魂は月光をさかのぼって昇天していくのだという。しかし毎回「墜落」してしまうとKは微笑む。一ヶ月ほどの交流の後、私は回復して故郷へ帰るが、後にKが満月の夜に溺死したという知らせを受ける。私はKの死を「とうとう月世界へ行った」と直感し、あの夜Kの魂が月へ昇天する間に、影に導かれた肉体が海へ歩み入ったのではないかと推測する。